FRIC・・・これって旧英国車のアレですよね^^;

F1に興味が無いと、それもテレビ見てますよと言うだけで無く最新情報を随時チェックしている方で無いとわからない話題ではありますが、以前から気になっていたことがあります。


今期のF1で、時々、話題になるFRICというシステムです。
おそらく、ロータスメルセデスが採用している「であろう」と言われるシステムです。
「であろう」と言う時点で、どういうものかハッキリしていませんね^^;
昨シーズン後半辺りからテストしているようですが。


KERSやDRSのようにレギュレーションで規定されているシステムでは無いので、現時点でFRICという名前がテレビの実況や解説であまり出てくることも無いでしょう。
昨年のメルセデスのダブルDRSのように(結果は伴いませんでしたが^^;)センセーショナルなものでは無いので、こういう構造だとイラスト付きでわかりやすく解説されることも今の時点ではほとんど無いようです。
現時点でFRICの構造が良くわからないので解説のしようが無いかもしれませんが。


FRICは、一応、アクティブサスペンション「の様なもの」と解説されていることが多いです。
もちろん、アクティブサスペンションはレギュレーションで禁止されています。
ですから、アクティブサスペンションではいけませんが、「の様なもの」であることが大切です。
FRICは、前後のサスペンションを連動して制御し、車体の挙動を安定させているようです。
空力が大切な現在のF1において、車体が路面に対して一定の車高を保ち、水平であることが、空力的に安定しますからね。
アクティブサスペンションが求めているものと同じ方向です。
見事な「の様なもの」です^^;
しかも、タイヤに優しいでしょうから、今年のすぐに摩耗してしまうピレリのタイヤを考えれば、メリットも倍増です。


アクティブサスペンションはレギュレーションで禁止されているのに、なぜFRICが禁止されないのかと言えば、積極的にアクティブで無いと言うことでしょうね^^; 変な日本語ですが^^;
車高や挙動などを検知して、前後のサスペンションを油圧コントロールしていくのが、アクティブサスペンションです。
つまり、センサーで検知した車高や挙動などを元に、コンピュータで解析して、アクチュエータを動かし油圧をかけていきます。
問題は、センサーで検知した値を元にコンピュータで解析していることと、それを元にアクチュエータを使って積極的にサスペンションのセッティングを変更していることですね。
厳密に言えばコンピュータ解析するのは勝手ですが、それを元に走行中にサスペンションのセッティングが変更されてはいけないと言うことです。


では、FRICはどうやって前後のサスペンションを連動して制御しているのかといえば、前後のサスペンションを何らかのパイプでつなぎ、その中を液体か気体を詰めておき、あくまで受動的に反応すると言うことです。
つまり、アクチュエータで油圧をかけたりとしてはいけないが、走行することによって勝手に反応するのは問題が無いと言うことですね。
もっとも、空力パーツは可動してはならず固定されていなくてはいけないというレギュレーションもありますが、サスペンションが上下するのは空力パーツでは無いと言うことなのですね。
過去にあった、空転するホイールキャップや、昨年のレッドブルのホイールのセンターに穴があるものは、可動するので空力パーツとされていましたが、サスペンションが上下するのは問題ないのでしょう。
アロンソルノーに居た頃のマスダンパーはどうよ?と言う話になりますが、あれも空力パーツが可動すると言うことで禁止になりましたが、政治色が濃いですよね。車体の上下運動が抑制されれば空力的にも有利ですが、だからといってマスダンパーを空力パーツとするのは、ちょっと無理があります。
無理矢理、解釈すれば、車体の上下運動を制御するものはサスペンションであって、それ以外のものが制御する様になって空力的なメリットを得る様なシステムは空力パーツと言うことでしょうけれど・・・それにしても、シーズン中に突然の禁止は酷いよね。


バンピーな路面でも車体は安定していれば、空力的にも安定しているわけで、これを外部から力を加えるわけでは無く、あくまでも受動的に反応して勝手に制御しちゃうと言うのは、なかなか凄いことですが外部からのコントロール無しに実用レベルまで持って行くのは、結構大変でしょうね。



さて、この話を聞いて、欧州車好きの方ですぐピンとくるのは、シトロエンだと思います。
ハイドロニューマチックですね。
ハイドロニューマチックは、前後左右のサスペンションをパイプでつなぎ、LHSというオイルで満たしているわけです。


ちょうど良い解説のイラストが無いかなぁ、と思って探してみましたが見つかりませんでした^^;
見つかったら後で足します^^;


簡単に言えば、路面に凸が有った場合、前輪がそこを通過するとタイヤが押し上げられます。
普通の状態であれば車は前が持ち上がり、車体は斜めになります。
ハイドロニューマチックの場合、ある一定以上持ち上がると、中のLHSが押し出され、パイプでつながれている後輪側に移動します。
後輪側にLHSが沢山移動すれば後輪が下側に押されます。
結果、前のサスペンションは短く、後ろのサスペンションは長く、なり、車は水平に保たれます。
しかも、なにかセンサーがあるわけでも無く、受動的に勝手にそうなるわけです。
わかりやすく前後だけで話しましたが、実際には左右もつながれていて4輪とも制御できるので、どこか1輪でもギャップにさしかかれば、他の3輪が制御されて水平に保たれます。


では、FRICは(求めるレベルはFRICの方がかなり高みにあるものの)、構造上、ハイドロニューマチックと同等なのでは?、という話ですが、いくつか異なる点が・・・。


1.FRICは前後しかパイプでつないでいない(ようだ)
2.ハイドロニューマチックは、エンジンで高圧ポンプを回して常に圧力をかけている
3.ハイドロニューマチックは機械式でも車高調整がある


1.に関してはそういう話を聞いただけです。FRIC自体の構造が良くわかっていないから何とも言えません。
左右もつないだ方がより車体が安定するのになぁ、とは思うのですがそうはなっていないようです。
いくら路面がキレイなサーキットとはいえ、バンピーな所もありますし、ストリートを走る場合もあります。今週末はモナコGPですしね^^;
ただ、左右まで調整しだすと、車体を安定させようとひょこひょこ動いて却って安定しないのかもしれませんね。
例えば、タイヤを縁石に乗り上げてコーナーを抜けていくときがありますが(イニシャルDの溝落としみたいなもの・・・では無いです^^;)、そんな時に車体を左右に動かされてはドライバーは不安定に感じてコントロールしにくいでしょうからね。
コーナーの時だけFRICをオフに出来れば良いですが、ドライバーが操作することによって走行中にサスペンションの挙動を変えることはレギュレーション違反ですから、そういった意味でも左右のコントロールをしていないのかもしれません。


2.はハイドロニューマチックはエンジンによって高圧ポンプを回しLHSに圧力をかけてパイプに満たしていきます。シトロエンをご存じならわかると思いますが、エンジンをかけるとニョキニョキと車高が上がっていくので見た目でもわかると思います。なぜ高圧ポンプで圧力をかける方法にしたのかは正確にはわかりませんが、そうすることによってユニットを小型化できるからだと思いますし、サスペンションや斜坑のコントロールも出来る様になるからだと思います。
FRICはどうかは知りませんが、少なくともエンジンで高圧ポンプを回す様なエンジンパワーのロスになる様なことはしないでしょうし、仮にFRICのパイプ内の液体か気体に圧力がかかっていたとしても、これはパイプに注入するときに圧力をかけて閉じ込めておけば済むことで、車に高圧ポンプを積むことは無いでしょう。


3.は完全にレギュレーション違反ですね。ドライバーによるライドハイドは禁止です。車高の調整はレース開始までに済ませておかねばならず、レース中は出来ません。2.と関連しますがそもそも高圧ポンプがあるからこそ車高調節が可能です。


ということで、車を水平に保つであろう原理はハイドロニューマチックと同じ(だと思う^^;)でしょうけれど、細かい部分が違いますね。


そこで思い出すのが、古(いにしえ)の英国車。
ADO15,ADO50,ADO16です。
わかりやすく言えば、miniシリーズ、mini cooperシリーズ、ADO 16シリーズです。
ADO16に関しては種類が多いのと共通の車名があるわけでは無いのでADO 16とします。
ちなみに、私は、Vanden Plas Princess 1300に乗ってました。 本当はMG 1100やMG 1300に乗りたかったです^^;


miniシリーズはMk-IIだけが該当し、ADO16は全シリーズですが、この車種には、ハイドロラスティックサスペンション、というサスペンションが装備されています。
言ってしまえば、ハイドロニューマチックの廉価版というか、簡易版みたいなものです。
確か、シトロエンに何らかのライセンス料も払っています。
当時のBMCはシトロエンに陶酔していたと良く聞きます。ローバーSD1はシトロエンCXを真似たと言われています。私には全然似てないと思いますけれど^^;


ハイドロラスティックサスペンションとの違いは、


1.車体に高圧ポンプは搭載されていないし、走行中に圧力をかけたりすることも無い。つまりエンジンをかけてもシトロエンの様に車高もニョキニョキ上がりません。
2.ハイドロニューマチックは、パワーステアリングやブレーキなどにもLHSを使っている、つまりこれらの油圧系と共用していますが、ハイドロラスティックサスペンションはただパイプの中に液体を詰めているだけです。


イラストがありましたので掲載しておきます。

というか、こちらのサイトから勝手に拝借させていただきました^^; 申し訳ありません。


つまり、外部からから何か圧力をかけることも無く、パイプの中の液体が前後に動くことによって自然に車体のバランスを確保します。
まさにFRICです。


ちなみに、FRICのパイプの中にあるものを液体か気体となっているけど、と突っ込まれそうですが、後年、ローバー100では、ハイドラガスサスペンション、というサスペンションが採用されていて、その名の通り、液体の代りにガスが詰まっています。


miniに関しては、Mk-IやMk-III以降のモデルは、有名なラバーコーンというゴムのサスペンションが採用されていて、ホイールベースの短さも手伝って、ハードな乗心地になるわけですが^^;、Mk-IIだけがハイドロラスティックサスペンションを採用しています。
小さな車体に通常のサスペンションを入れられず、考えた末のラバーコーンの採用だったの思うのですが、ハードな乗心地を何とかしようとしてハイドロラスティックサスペンションを採用したのでしょうけれど、コストがかなりかかるのでラバーコーンに戻されたと思います。


F1が好きな人も居れば、旧英国車が好きな人も居ると思います。
その両方が好きな方は絶対数はかなり少ないと思うので書かせていただきました。
というか、自分が気になっただけですが^^;


F1好きにとっては、ふーん、で済む話でしょうけれど、旧英国車好きにはちょっと懐かしい話だったかと思います。
ハイドロラスティックサスペンションは、形を変え、F1にも使われていると言うことです。
もちろん、ハイドロラスティックサスペンションより、FRICの方が求めるものも違い高度なコントロールをされていると思いますけれどね。


ハイドロラスティックサスペンション採用車は、miniとADO16の両方で乗っていますが、乗心地が良いかと言えば、確かにラバーコーンの様な荒々しさは少ないですが、ピッチングは抑えきれないし、フワフワし易いので、独特の乗心地ですね。
この辺りは、本家のシトロエンのハイドロニューマチックに近いかと思います。