やっぱり、ピレリはF1にふさわしくない

6月の最初に、F1でのピレリの空気の読めなさに呆れて、ピレリはF1にふさわしくない、と書きました。(id:popopo_2004:20130605#p1 参照)


長いのでこれまでの経過をまとめると、

  • ピレリは今年のタイヤ設計に失敗した
  • タイヤがもたずピットストップが多い
  • ピレリ自身もそのことを認めている
  • 多くのチームから不満が出る
  • なぜか逆ギレで、言われた通りやってるだけだが、望むなら元に戻して退屈なレースをしろ発言
  • 今シーズン中にタイヤ変更をするという流れ
  • シーズン中のタイヤの変更は、今年の失敗タイヤに合わせて真面目に車を作ったチームから不満
  • 今年のマシンでどうしてもテストがしたいのでメルセデスにこっそり連絡をして、シーズン中はテスト禁止にも関わらず1000kmもテストをする
  • モナコGP直前にテストしたことが他チームにばれる
  • モナコGPメルセデス優勝
  • メルセデスはテストは利益を得ていないと発言
  • ピレリはテストは問題は無いと発言

です。


まとめたところで、今から沢山書くので結局長いですがw


このテストの件は大きな問題となりFIA国際法廷に持ち込まれました。
結果から先に言えば違反と判断されました。そりゃそうです。

メルセデスは違反し利益を得たが不正の意志なし」
2013.06.22


 メルセデスに対し、戒告および若手テスト参加禁止の処分を言い渡したFIA国際法廷は、メルセデスは5月のピレリタイヤテストにおいて今季マシンを走らせたことで“不公平な競技上のアドバンテージ”を得たものの、意図的に規則違反を犯したわけではないとの見解を示した。
 判決の中で、国際法廷は、メルセデスピレリは共にテストに関して誠実に行動したものの、レギュレーション違反の事実は避けられなかったと述べた。
 そのため、メルセデスピレリには戒告処分を与え、メルセデスには7月にシルバーストンで行われる若手テストへの参加を禁じたということだ。
 両者は2013年型マシンの使用に関してFIAに問い合わせはしたものの、FIAが示す条件を徹底的に適切に追求しなかったと、国際法廷は述べている。しかしながら両者とも不正をする意志はなかったとみなされた。「メルセデスが(FIAの)許可を得られなかったと考える理由はなかった」とも判決には記されている。
 しかし他のチームはテストに招かれなかったことでメルセデスはアドバンテージを得たと判断された。
 メルセデスはテストの結果、「重要なアドバンテージ」を獲得、「少なくとも潜在的に不公平な競技上のアドバンテージを得た」と、判決には記されている。

しかし、戒告処分のみと罰則はほとんど無し。
メルセデスは今年ある若手のみのテストからも除外されました)
他のチームからは不満が出ています。


ですが、F1らしい微妙な決着でこれで良いでしょう。
もちろん、もっと明確に罰則を与えた方が良いと思いますしその点については個人的には大いに不満がありますが、とりあえず違反と認められました。



さて、前回の繰り返しになる部分が多いですが、見直していきましょう。


まず、ピレリの今年のタイヤは出来が悪いことは事実です。


現在のF1タイヤはピレリワンメイクです。
ワンメイクはレギュレーションで決められています。


ブリヂストンミシュランが参戦していた時代、両社がどんどん争ってタイヤ性能が上がっていきました。タイヤ戦争と言われた時代です。
FIAとしては安全面でもスピードは抑えたいところですし、両社の争いが増せば増すほどタイヤ性能を突き詰めすぎそれがトラブルになります。
タイヤ戦争の行き過ぎた結果が2005年のインディアナポリスでのアメリカGPで、ミシュランのタイヤがもたず安全性が確保できずにミシュラン勢は決勝を棄権し、ブリヂストン勢のみのレースとなったと言うことです。決勝6台のみのレースとなりました。
もちろん、性能を追求すれば安全面は二の次で良いわけではなく、これはミシュランの大きなミスです。
この少し前から、タイヤ戦争を抑えるためにワンメイクにすることが検討されていました。ワンメイクになればミシュランという流れがあったような気がしますが、この件で一気にミシュランは発言力を失い、結果、ブリヂストンワンメイクとなりました。


ワンメイク後は、過激なタイヤ性能の追求もなくなり、ブリヂストンからピレリに変わった時点で、よりレースが面白くなるよう、あまりもたないタイヤを作るようにFIAから言われていました。
2013年のピレリのタイヤがもたなさすぎるのは、もたなくすることのさじ加減が失敗したと言うことです。が、ピレリにも同情の余地はあります。


まず、最新のマシンでテストが出来ないからです。
マシンはレギュレーションによって刻一刻と変わっていますので最新マシンでテストしないと有益なデータは得られないでしょう。
しかし、最新のマシンでテストをすると、そのチームだけがアドバンテージを得てしまうといけないので出来ません。
というか、例えば2013年シーズン向けのマシンは、マシンは2012年から作っています。しかしタイヤ自体も毎年変わるわけです。もう少し長持ちさせるのか、もっともたなくするのか、FIAからの意向もあるでしょう。
2013年のタイヤはこんな感じで作りますよというデータが各チームに通達されるのが2012年の秋。その前から各チームは2013年用マシンを作っていると思いますがこのタイヤのデータを元にマシンを調整していきます。タイヤの痛みが激しそうならタイヤに優しいマシン。昨年よりもちそうならタイヤに負担があってもスピードを追求するマシン。となるわけです。
つまり、最新マシンで試してタイヤを作るのはそもそも無理なのです。タイヤが先にあり、それにマシンを合わせる感じです。
後、レギュレーションの問題もあり、昨年のマシンなら良いかと言えばそういうわけではありません。昨年のマシンを使えば、このマシンを所有するチームが有利になるからです。
2年前のマシンなら問題ないとされています。これはタイヤテストに限らず、他所のチームから今年のマシンを買って参戦した、昨年のマシンを買って参戦した、はNGなのと同じ理由です。
ピレリ自体も、ルノーの2010年マシンを昨年から所有しています。


さて、色々ありましたが、結局、2013年のピレリタイヤは、予想以上に劣化が早くもちません。
ピレリ自身もピットストップが多いことを認めます。
各チームからは不満も出ます。
ピレリFIAから言われて作っただけだと反論。確かにそうですが、予定よりもたなさすぎです。
そしてピレリは色々言われて逆ギレします。
「レースを盛り上げるために言われた通り作っただけだ! 文句があるなら昔のタイヤに戻すから退屈なレースをしていろ!」
2ちゃんねるにいる厨房みたいなもので、煽り耐性がなさ過ぎですw
大人げないです。


もたないタイヤには不満も多く、シーズン中にタイヤを変更するという流れになりました。
ただ、このことには不満を感じるチームもあります。
最初から今年のタイヤはもたないってことはわかっていたし、そもそも特定のチームのタイヤがもたないわけではなく、タイヤは同じなのでイコールコンディションです。もし、特定のチームのタイヤがもたないのであれば、そのチームが今年のタイヤに合わせて車が作れなかっただけです。
当然不満が出るでしょう。何のためのオフシーズンの車の開発だったのでしょう。
個人的にもシーズン中にタイヤを変更することは反対です。
でも、逆ギレして、元に戻してやるから退屈なレースをしてろ!、というピレリには呆れます。


しかし、タイヤは作り直す方向に。それだけFIAピレリが想像する以上に出来が悪いってことです。


で、ピレリはタイヤを作り直したいが、現行のF1マシンでテストがしたい。
F1マシンでテストが出来ないから今年の失態が起きるのだと言いたいのでしょう。確かにそういう側面はあるはずです。


そしてピレリモナコGPの前週にメルセデスとだけテストをします。
レギュレーションではシーズン中のテストは禁止されていますが1000キロもテストしちゃいました。
そして、メルセデスモナコGPで優勝。


一応、メルセデスはこのテストで利益を受けていないと言います。
なわけないですよね。
メルセデスの気持ちはわかります。
今年(も)成績がパッとしません。
フェラーリはともかく、メルセデスはとんでもないほど予算を使っています。しかし結果は伴わない。
毎年、撤退するのでは、と噂が出ます。
とにかく結果が欲しい。
そんな時にシーズン中のテストが出来るのなら喜んで参加するでしょう。


レギュレーションではピレリが必要と感じた場合、1000キロのテストが出来ると言うことになっています。
これを盾に問題ないと言っているのでしょう。
でも、ハッキリ言って、バカじゃないの? と思います。
シーズン中のテストが禁止されている中、特定のチームだけがテストさせたら問題が出るって想像付くでしょう、と言うことです。


チーム側は禁止されているシーズン中のテストをしたいでしょう。気持ちはわかります。違法ですけどメリットはあります。


ピレリ側から見れば、どこのチームが勝とうとピレリの優勝数は加算されます。どこが勝っても良いでしょう。チームとは立場が違います。
ピレリが、例えば資本関係のある特定のチームが有利になるようにに肩入れをしたとか、金銭の授受があってそのチームだけにテストをさせた、というなら気持ちはわかります。もちろんダメなことですけれど。
でも、ピレリはそんなことはなく、ただタイヤを直したいから、最新のマシンでテストをしたいから、という理由だけでメルセデスという特定のチームとだけテストしてしまいました。


本当にバカです。空気が読めなさすぎです。
何のためのタイヤのワンメイクか本当に理解していません。
どのチームも同じタイヤをはいてイコールコンディションでレースをしていて、これは無いと思います。
サプライヤーとしての自分の立場が本当にわかっていません。


確かに、最新マシンでテストを出来ないイライラはあるでしょう。
もたないタイヤへの批判に対し大人げない発言もあってちょっと呆れていましたが、レースの成績に左右することをサプライヤーが進んでしちゃ行けないだろってことです。


今回の違反という決定。当然です。
直前までピレリは問題が無かったと言っていますが、本気でそう思っているのなら頭がおかしいです。
どうしてもテストがしたければ、全チームに対して行うように仕向ければ良いのです。
実際に出来るかどうかなんてわかりませんがそういうアピールをすれば良いでしょう。
ぶっちゃけ、逆ギレして大人がない発言が取り上げられるぐらいで、ピレリの発言は注目されます。
F1は政治論争がありそこがイヤな人も居ますが、それはそれ。
そこを逆手にとって、そもそも劣化がはやいタイヤはFIAの意向。それでも現行マシンでのテストが出来ないので限界がある。今後もこういう問題は出る可能性はあるから、合同テストなりをしてくれ。と展開すれば良いわけです。
それを大人げく逆ギレした上にこっそりテスト。
そりゃバカです。


大人げないのは呆れますがそれはともかく、サプライヤーとして特定のチームに肩入れすることが問題であるってことが全く理解できないのであれば、ほんとうにレースに関わる資格が無しです。


本当にF1からとっとと出ていって欲しいです。


別に私はピレリ自体を否定しているわけではありません。
ピレリなんか無くなっちまえ!とは思っていません。
一生懸命、市販タイヤの高性能化を追求していって貰えば良いです。
でも、自分の置かれた立場も理解できないし、レースにはふさわしくない企業だってコトです。
ですからレースには関わらずタイヤを売っていれば良いのです。
ピレリのタイヤは別に悪いわけではありませんからね。


個人的に色々不満があるチームやメーカーはありますが、レースに関わるななんて思うような企業は珍しいですよ。
ぶっちゃけピレリトヨタだけです。
トヨタに関しては、WRCレギュレーション違反と、F1撤退の仕方で、もうレースに直接関わるのは結構ですと言いたいです。
F1撤退に関しては、ホンダもBMWも色々言われました。
が、トヨタの場合、2012年までの参戦をサインしておいて、その年にいきなり撤退というのは、クズのやることです。
トヨタはF1に限らずどのカテゴリへもレースへの直接の参加は迷惑になることが多いので極力辞めて欲しいです。
スポンサーだけするとか、黙ってエンジンだけ提供するとか、それぐらいにして欲しいです。
どちらもレースに関わるべきでないクズ企業ですが、でも企業として全部否定する必要は無いです。一生懸命に車やタイヤを作っていれば良いです。
そもそもそちらが本業だし、どちらもその方面では優秀な企業ですからね。


さて、ここまで書けば、違反と認められても、戒告処分で実質お咎め無しは不満かと言えば不満です。
が、一応、違反だと認められたので、バカなピレリもさすがにわかるでしょう。
メルセデスは確信犯だと思うので良いですが。


ピレリは出ていって欲しいと前回も書きましたが、ピレリは今年で3年契約が切れます。先ほども書いたように来期用のタイヤは秋には各チームに報告しなくてはいけません。
しかし、この時点で未だにFIAと来年以降の契約が更新されていないのが不思議なわけです。
なぜ更新しないのでしょうかね。
時期的にはもう遅いと思うのです。実際にはピレリも来季用のタイヤの開発には着手しているでしょう。間に合いませんからね。
でも、契約が更新されていません。
イライラしますよね。
だからって逆ギレや特定チームに肩入れとなるテストをして良いとは思いませんが。その辺りがバカなんですけどね。
ぶっちゃけ、ちょうど今年で契約切れなので、ピレリを追い出すちょうど良いチャンスでもあります。
実はなかなか契約が更新されないのも以前からトラブルが多かったのかなぁとも思います。
実はピレリに変わって新規参入する企業と裏交渉でもあるから契約が遅れているのかとも思いました。
が、F1タイヤを作っているピレリなら来期も準備は出来ても、もうここまで遅れていては準備期間を考えても新規参入は難しいでしょう。
GP2のタイヤを少し改良すれば使えそうですが、運悪くGP2もピレリです^^;
スーパーフォーミュラーブリヂストンですが、ブリヂストンは来期のF1参入無いと言っています。
一時期出たがっていたハンコックも無しだそうです。
で、今回の裁定。
来期もピレリと言うことですね。やれやれです。
FIAとしても怒って出て行かれると困るので、違反ということはハッキリ言うがお咎め無しってコトでしょうね。


過去に経験のあるミシュラングッドイヤーの可能性だってあるだろうとも思いますがその線も無しですね。現実問題難しいでしょうし。
ちなみに、ミシュランは2005年アメリカGPで大変なトラブルを起こしましたが、レースに参加する企業としては問題ないと思います。
確かにブリヂストンとの行き過ぎた競争によって致命的なミスを犯しました。褒められたものではありません。
しかし、タイヤに問題のあるコーナーを減速させるためにシケインの設置等を提案したのはミシュラン。最終的には受け入れられませんでした。ミシュランワンメイクならともかくブリヂストンも居るわけで仕方が無いと思いますが、どこのコーナーが危ない、この速度以下で通過してくれ、というのはミシュラン側からチームに提供。
最終的にコースレイアウトの変更も認められず万策尽き、ミシュラン側からチームに棄権することを提案。
観客は怒るが、裁判の末、入場料払い戻し。
もちろんレースに耐えうるタイヤを持ち込めなかったというのはサプライヤーとして致命的です。褒められたものではありません。
が、起きてしまったミスを何とかしようとしたのもミシュラン


今年のピレリのタイヤに批判が集中していますが、この時のミシュランのタイヤのようにレースが出来ないとかバーストして安全面に問題があると言うわけではないです。
自分の置かれた立場、劣化するタイヤはFIAの指示、シーズン中のタイヤ変更は公平性に欠ける、予想より劣化のレベルがヒドイが現行マシンでテストが出来ないことに限界もある、等々、訴えることはあったのでは?
とにかく、煽り耐性を付けて、行動するときには自分の立場を考えられるようになってくれれば良いのですけどね。